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ゲイル・サラモン(藤高和輝 訳)
装幀:近藤みどり
カバー写真:Adrian Swancar
2019年9月13日発売
四六判 上製カバー装 376頁
定価:本体3,600円+税
ISBN 978-4-7531-0355-3
不可視化されたトランスジェンダーの身体からの問いかけ
「LGB fake-T」として、不可視化されてきたトランスジェンダーの身体。本書は、現象学や精神分析をトランスジェンダー理論として読み直す。「身体自我」、「身体図式」などの概念を駆使して、トランスジェンダーの身体経験を理論的に考察。「身体とは単なる物質的なものではなく、身体イメージの媒介によってはじめて生きられる」というトランスジェンダーの身体経験の分析を通じて身体そのものを問い直し、「感じられた身体」と「物質的な身体」の不一致や心身二元論を乗り越える枠組みを提示する。トランスジェンダースタディーズの重要書。
ジュディス・バトラー(judith butler)
「この注目すべき本において、ゲイル・サラモンは身体図式(現象学から)と身体自我(精神分析から)の概念を独創的に用いて、きわめて説得的かつ巧みに、身体の物質性がその分節化に必要な図式を通して形作られることを論じている。
この急速に発展している重要な分野における他の研究と異なって、サラモンの本が焦点を当てているのはトランスジェンダーの間主観的な構築であり、いかに「呼びかけ/呼称」がトランスセクシュアルの自己‐生産において機能しているのか、そして、いかに〈他者〉――予期され、求められる〈他者〉――の眼差しが身体図式を「築く」よう働くのかを考察している。
サラモンの著作は、文化理論(カルチュラル・セオリー)にはめったにみられない非凡な洞察力と哲学的なエレガンスを備えており、身体そのものの物質性に関してトランスジェンダーが含意しているものに鋭敏な哲学的省察を加えている。」
ジュディス・ハルバースタム(Judith Halberstam)
「『身体を引き受ける』は、現象学の方法によって、身体に関する現代の諸理論にきわめて魅力的な介入を行っている。「物質性の修辞学」の内部にトランスジェンダリズムを位置づけることで、サラモンは、オルタナティヴなジェンダーの理論と生きられた経験の双方を記述することを可能にするしなやかな理論的枠組みを念入りに作り出している。
この本は疑いもなく、トランスジェンダー・スタディーズと批判理論とのあいだの架け橋になるものであり、それによって、身体化されることが何を意味するのかを理解する新たな方途を開くだろう。」
目次
序論
第Ⅰ部 身体とは何か?
第1章 身体自我と物質的なものという不確かな領域
第2章 性的図式――『知覚の現象学』における転位とトランスジェンダー
第II部 ホモエラティックス
第3章 ボーイズ・オブ・ザ・レックス――トランスジェンダーと社会的構築
第4章 トランスフェミニズムとジェンダーの未来
第III部 性的差異を超えること
第5章 性的差異のエチカをトランスする――リュス・イリガライと性的未決定性の場
第6章 性的無差異と限界の問題
第IV部 法を超えて
第7章 文字=手紙(レター)を保留すること――国有財産としてのセックス
原註
参考文献
謝辞
訳者解説
著者
ゲイル・サラモン(Gayle Salamon)
カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。その後、プリンストン大学の英語学の助教を経て、現在、同大学の英語学、及び、ジェンダー&セクシュアリティ・スタディーズ・プログラムの教授。本書の他に、 The Life and Death of Latisha King: A Critical Phenomenology of Transohobia, NYU Press, 2018がある。
訳者
藤高 和輝(ふじたか かずき)
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。現在、大阪大学人間科学研究科助教。著書に、『ジュディス・バトラー――生と哲学を賭けた闘い』(以文社)。共著書に、『子どもと教育の未来を考えるII』(北樹出版)。論文に、「とり乱しを引き受けること――男性アイデンティティとトランスジェンダー・アイデンティティのあいだで」(『現代思想 特集=「男性学」の現在』2019年2月号)、「身体を書き直す――トランスジェンダー理論としての『ジェンダー・トラブル』」(『現代思想 総特集=ジュディス・バトラー 』2019年3月臨時増刊号)など。